NEWS
最古の光合成生物「シアノバクテリア」の新しい光利用システムを発見 ―ロドプシンによる環境適応の軌跡が明らかに―
シアノバクテリア(藍藻)は、クロロフィルを使った酸素発生型の光合成でよく知られています。しかし、それに加えて「ロドプシン」と呼ばれる光駆動タンパク質でも光エネルギーを活用しています。
本研究では、メタゲノム解析と構造解析により、シアノバクテリアに特有の新しいロドプシン 「Cyanorhodopsin-II(CyR-II)」 を発見しました。CyR-IIは、光を受けてプロトン(H⁺)を細胞外に運び出す「光駆動型プロトンポンプ」として働きます。
さらに、CyR-IIには光の吸収特性によって2つのタイプがあり、
-
YCyR-II:黄色光(約570nm)を吸収し、主に陸上の土壌に適応
-
GCyR-II:緑色光(約550nm)を吸収し、海洋のバイオフィルムに適応
といったように、それぞれ異なる環境で機能していることが分かりました。加えて、このロドプシンは進化の過程で水平遺伝子伝播(HGT)を介して広がった可能性も示されています。
これまでシアノバクテリアの環境適応はクロロフィル色素の多様化に注目されてきましたが、本研究は ロドプシンによる代替的な光利用戦略 が、シアノバクテリアの生態的成功を支えてきたことを示す新たな視点を提供します。
プレスリリース(AORI): 最古の光合成生物「シアノバクテリア」の新しい光利用システムを発見 ―ロドプシンによる環境適応の軌跡が明らかに―